100円のLEDデコレーションライトを発信回路で点滅
キャンプ歴2回の初心者キャンパーですが、早々に痛感したことがあります。
テントやタープを張ったロープやペグが、日が落ちると本当に見えません。
ヘッドライトで照らせば見えるものの、
- サイトを歩いているときにふとロープに引っかかりそうになる
- 子どもが走り回るときに、ペグやロープに躓きそうでヒヤッとする
という場面が何度かありました。
いわゆるリフレクター入りのロープや、ガイロープ用の市販LEDもありますが、「とりあえず一晩だけ、自分のサイト周りのロープ位置が分かれば十分」という状況です。
そこで、
1夜だけ電池で動かせて、ロープやペグの位置が分かる程度に光ってくれればいい
という、かなり割り切ったLEDロープマーカーを自作してみることにしました。
改造素材:3Vで光る10連LEDランプ
家に、3Vをそのまま接続すると光る「10連LEDランプ」が100円ショップに売られてました。
クリスマス用に売られているLEDが10個ぶら下がっているタイプです。
- 単三電池2本で駆動(約3V)
- 単純に電池ボックスと直結すると一様に点灯する
- 特に制御回路は入っていない、ごくシンプルな構造
この「10連LEDランプ」を、ロープマーカー用の光源としてそのまま使いつつ、電子工作側で点滅を追加する、という方針にしました。
目標
今回の用途は「足元の注意喚起」なので、明るさや色にはそれほどこだわりません。その代わり、電池の持ちは気にしておきたいところです。ざっくり、次のような数字を目標にしました。
- 電源:単三電池2本(約3V)
- 動作時間:1夜(8時間程度) もてばよい
- 10連LEDランプの平均電流:数mA台を目標
(ピークで 10〜20mA 流れても、デューティを絞って平均を落とす前提) - 点滅周期:2〜4秒くらいでふわっと点いてふわっと消える
- 回路はロープ近くに小さなケースでまとめて入れられる程度の点数
「明るく照らす」というよりは、暗闇に目が慣れたときに、ロープ位置が分かればOKというイメージです。
単体LEDの弛張発振回路ではうまくいかなかった
まずは、単体LEDをチカチカさせる定番の弛張発振(リラクゼーション発振)回路から試しました。
参考にしたのはこちらです。
2SC1815+2SA1015にコンデンサと抵抗を組み合わせた、教科書どおりの弛張発振回路で、単体のLEDならきれいに点滅します。
ところが、この回路のLEDを 丸ごと10連LEDランプに置き換えると、途端に挙動がおかしくなりました。
- 単体LED:きれいに点滅
- 10連LEDランプ:
- 単体LEDと並列につなぐと、うっすら点滅はするがかなり暗い
- 単体LEDと置き換えると、ほとんど光らない/発振が止まる
原因を整理すると、この弛張発振回路のLEDは
- 「見た目の表示用」であると同時に
- コンデンサの放電経路を決めるダイオードとしての役割を持っている
という、回路の一部として組み込まれた素直なLEDです。
一方、10連LEDランプの中身は、
- LED複数個+抵抗の組み合わせで「3V直結でそれなりの電流を流す」前提
- 順方向電圧やI–V特性が「単LED+保護抵抗」とは大きく異なる
ので、そのまま置き換えると発振条件が崩れてしまう、という結果になりました。
発振回路とLED駆動を分離する方針に変更
そこで方針転換して、
- 弛張発振回路は「波形を作るステージ」としてそのまま使う
- 10連LEDランプは、別のトランジスタでスイッチングする負荷扱いにする
という二段構成にしました。
1段目:2SC1815+2SA1015による弛張発振
1段目は、参考をほぼそのまま使っています。
- NPN:2SC1815
- PNP:2SA1015
- コンデンサと抵抗で、数秒周期の弛張発振
- 単体LEDも残しておき、点滅波形の「見える化」用として活用
ここはなるべくいじらず、発振条件を壊さないことを優先しました。
今回の改造では、2SA1015のベース〜エミッタ付近に現れる電圧変化を「点滅信号」として使っています。LEDが点くタイミングに合わせて電位が変化するので、その変化を2段目のトランジスタのベースに渡す形です。
2段目:S8050で10連LEDランプをローサイドスイッチ
10連LEDランプ側は、S8050を使ったごく単純なローサイドスイッチ構成にしました。
- 10連LEDランプの+側 → 単三2本の3V
- 10連LEDランプの−側 → S8050のコレクタ
- S8050のエミッタ → GND
そして、
- 2SA1015側のBE近傍のノードから
- 4.7kΩ〜数kΩ程度のベース抵抗を介して
- S8050のベースに接続
することで、弛張発振回路が「LED ON」と判断したタイミングで、S8050がONになるようにしました。
ここでのポイントは、
- 弛張発振回路から見て、S8050+10連LEDはあくまで「ベースにぶら下がった軽い負荷」にとどめる
- S8050を確実に飽和させるためのベース電流は確保しつつ、1段目の発振条件を乱さない範囲で抵抗値を決める
というバランス取りです。
手元のS8050を実測したところ、Ic≒2mAの条件でhFEが300台出ていたので、ランプを20mA前後で光らせるなら、飽和動作時のβを10〜20程度で見積もり、ベース抵抗を数kΩにするあたりがちょうどよい目安でした。
実際の点滅の様子と電池の持ち
二段構成にしてからは、10連LEDランプは目論見どおり、
- 暗闇の中でロープやペグの位置が分かる程度に点滅
- 周期は2〜4秒くらいの、ゆっくりした「ふわっと点灯→ふわっと消灯」
- 周囲が真っ暗になったサイトでは、十分な視認性
という動きになりました。
消費電流はきちんと計測していませんが、感覚としては
- ピーク時:10〜20mA 程度(点灯フェーズのみ)
- デューティを絞った結果、平均では数mAレベル
に収まっているようで、手持ちのアルカリ単三電池2本でも、一晩のキャンプ(8時間前後)なら問題なくもちます。
おわりに:市販のLEDを「自分仕様」にしていく楽しみ
今回は、
- 「キャンプ歴2回の初心者が、ロープとペグの位置を分かりやすくするために LED ランプを改造した」
という、かなりピンポイントな動機からスタートしました。
最初は、「3Vで光る10連LEDランプがあるなら、そのまま弛張発振回路のLEDと置き換えればいいだろう」と安易に考えていましたが、実際には
- 回路内のLEDは「波形を作る部品」
- 10連LEDランプは「ただの負荷」
という役割の違いがあり、そのギャップを埋めるために発振ステージと駆動ステージを分離するという回路設計の基本に立ち返ることになりました。
結果として、
- 1段目:2SC1815+2SA1015の弛張発振で点滅信号を作る
- 2段目:S8050で10連LEDランプをスイッチングする
という、自分なりに納得感のある構成にたどり着けたのは収穫でした。













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