スティックPC「MS-NH1」にIntel純正クーラーを装着してサーマルスロットリングを解消する
部屋の片付けを行っていたところ、長らく引き出しの奥で眠っていたマウスコンピューターのスティック型PC「MS-NH1-W10」が見つかりました。
本機は手のひらに収まる極小の筐体に、クアッドコアCPUのIntel Atom Z3735F(基本クロック1.33GHz、バースト時1.83GHz)、2GBのメインメモリ、32GBのeMMCを搭載したモデルです。初期状態でWindows 10 Home(32bit)が導入されていますが、現代の基準ではスペック的に厳しく、使い道がないまま放置されていました。
現状の動作確認を兼ねて起動してみたところ、OSの起動直後や軽いブラウジングを行うだけでもCPU温度が容易に70℃を超えてしまう状態でした。内部の小さなファンや放熱板では排熱が追いつかず、激しいサーマルスロットリングが発生しています。タスクマネージャー上で確認すると、動作クロックは定格の半分以下である500MHz前後まで落ち込んでおり、マウスポインタの追従すら遅延するほど動作がもっさりとしていました。
特に使い道が決まっているわけではありませんが、このまま処分するのも惜しいため、冷却機構を大幅に強化する無駄な改造を試みることにしました。
サーマルスロットリングの回避と定格クロックの維持
今回の改造における目的は、熱暴走によるサーマルスロットリングを完全に抑え込み、CPU本来の処理性能を常に引き出せる状態にすることです。
具体的な目標値としては、以下の2点を設定しました。
- 高負荷時であってもCPU温度を40℃前後に維持すること
- 動作クロックが500MHzに低下するのを防ぎ、定格の1.33GHzで安定して動作し続けること
小型PCとしての携帯性は完全に損なわれますが、設置型デバイスとしての安定動作を最優先とします。
3Dプリントマウンタの製作と5V低速ファン駆動
3Dプリンタを用いて専用のマウンタをモデリング・出力しました。
Intel純正クーラーにはマザーボード固定用のプッシュピン穴が4箇所備わっています。今回はこのプッシュピン穴のピッチを採寸し、マウンタ側の突起がプッシュピンでそのままパチンとはまる構造を設計しました。MS-NH1の基板と放熱板がクーラーのセンターにしっかりと密着するよう位置合わせを行っています。実際に取り付けてみたところ、純正の固定ピンをそのまま流用してガタつきなく強固に挟み込むことができました。
放熱板とクーラー受熱面の熱伝導には、定番のサーマルグリスである「Arctic MX-4」を適量塗布し、熱抵抗を最小限に抑えています。
続いてファンの給電方法です。E97378-001は定格12V駆動のPWM対応4pinファンですが、今回はMS-NH1本体のUSB端子(5V)から電源を取りました。12V仕様のファンであっても5V給電でギリギリ回転を維持できることを確認できたため、単一ポートタイプのPWMファンコントローラーを経由させ、最低回転数で静音駆動させています
なお、PWM信号の制御周波数を実測してみようと試みたものの、所有しているオシロスコープが故障していたため、周波数の波形確認は見送っています。
冷却効果と動作クロックの検証
改造完了後、システムを起動して温度とクロックの変化を検証しました。
結果は以下の通りです。
- CPU温度: アイドル〜軽負荷時で70℃超だった状態から、40℃前後へと劇的に低下
- 動作クロック: サーマルスロットリングによる500MHz低迷から脱出し、1.33GHzで完全に安定
冷却面に関しては文句のつけようがない結果が得られ、サーマルスロットリングは完全に解消されました。
しかし、肝心のWindows 10のレスポンスに関しては、率直に言って「もっさり」とした重さが残ったままです。クロックが500MHzから1.33GHzに引き上げられたことで極端な引っかかりは減少したものの、Atom Z3735Fの演算能力、2GBしかないメインメモリ、低速なeMMCという物理的なハードウェア構成が、現代のWindows 10を快適に動作させるには決定的に不足しています。冷却を極限まで強化しても、OS自体の重さという根本的な壁は破れませんでした。
まとめ
放置されていたスティックPC「MS-NH1-W10」の熱問題を解決するため、Intel純正クーラー「E97378-001」とMX-4グリスを導入しました。プッシュピン穴を活用した3Dプリントマウンタを製作し、USBの5V給電とPWMコントローラーでファンを低速駆動させた結果、CPU温度は70℃超から40℃へ低下し、クロックも500MHzから1.33GHzの定格動作を維持できるようになりました。冷却改造としては成功したものの、ハードウェア仕様の限界によりWindows 10の重さは解消できませんでした。今後はこの安定した冷却環境を活かし、軽量なLinuxを導入しておもちゃ・実験機として再活用する予定です。
