テスター用プローブホルダーを3Dプリンタで自作する
基板の導通チェックや電圧測定を行う際、テスター(マルチメーター)のプラス・マイナス両方のプローブを両手で保持すると、基板の固定や安定化電源の操作、オシロスコープの調整などが一切できなくなります。特に表面実装部品(SMD)の足や狭小ピッチのパターンを当てる作業では、手が1本足りない状況に陥りがちです。
海外通販サイトのAliExpressを巡回していたところ、2本のテスタープローブをトング状に束ねて片手で操作できるようにする「マルチメーター プローブホルダー」が販売されているのを見かけました。写真を見る限りFDM方式の3Dプリンタで出力されたような構造をしており、シンプルなバネ機構とプローブクリップを組み合わせた形状でした。
手持ちのテスタープローブに最適化した治具の自作
既製品を購入する選択肢もありましたが、手持ちのプローブ軸径に合わなければ保持力が不足してガタついたり、先端の位置合わせがシビアになったりします。また、単純な構造であれば自身の環境に合わせた寸法でモデリングした方が早く、好みのバネ圧にも調整できます。
そこで、手持ちの標準的なテスタープローブにジャストフィットするホルダーを一から3D CADで設計し、3Dプリンタで自作することにしました。
FreeCADによるモデリングとプリント
設計ツールにはFreeCADを使用しました。
全体の構造は、手元側に配置した円形リングとU字状の凹みを組み合わせた板バネ構造、そこから先端に向かって伸びる2本のアーム、そして先端のC型保持クリップで構成しています。
外形寸法については、AliExpressの商品説明画像に記載されていた全体サイズ(高さ約7.6cm / 2.99inch、幅約5.3cm / 2.08inch)を参考にし、手で持った際に扱いやすい全体のスケール感を合わせました。
プローブ保持部のC型クリップは、手持ちのプローブのグリップ径を実測した値に基づき、内径9mmで設計しました。クリップの開口部はプローブ外径よりわずかに狭くし、押し込んだ際にパチンと収まるスナップフィット形状としています。
造形時の積層割れを防ぐため、スライサー上ではベッド面に対して平置き(XY平面に沿って全体を寝かせた状態)で配置しました。これにより、アームの曲げ応力やクリップの押し広げ応力がフィラメントの射出方向(繊維方向)にかかるため、実用に耐えうる機械的強度を確保できます。使用フィラメントには一般的なPLAを採用しました。
片手測定の実用性とねじれ剛性に関する改善点
実際のピン測定における操作感と見えてきた剛性の課題
出力したホルダーにテスタープローブを装着し、ブレッドボード上のロジックIC(SN74HC04N)のピン測定でテストを行いました。
内径9mmで設計したクリップ部は狙い通りの嵌合となり、ガタつきなくしっかりとプローブを保持できました。バネ部分の反発力もちょうど良く、指先の力加減だけでプローブ先端の間隔をスムーズにコントロール可能です。DIP ICの隣り合うピンや対向ピンへ片手でプローブを当てられるため、もう片方の手で電源スイッチやオシロスコープを自由に操作でき、測定作業の効率は大幅に向上しました。
一方で、実際に使用したことで改善すべき課題も見えてきました。板厚(Z方向の高さ)を薄めに設計したため、プローブ先端を対象物に押し付けた際に「ねじれ方向(面外方向)」へわずかに歪む現象が発生しました。バネとしての開閉方向には十分な反発力があるものの、斜めに荷重がかかった際のねじり剛性が不足しています。この点については、バネ部およびアーム部のZ方向の高さを増すことで、ねじれに対する剛性を強化できる見込みです。
今回作成した3Dモデルは、外観確認用としてSketchfabにて公開予定です。3Dデータのダウンロード配布については、剛性強化などの改良を行った上で、BOOTHやPatreonでの提供を検討しています。
まとめ
両手が塞がるテスター測定の効率化を目的に、AliExpressの製品寸法(高さ約7.6cm、幅約5.3cm)を参考にFreeCADでプローブホルダーを自作しました。内径9mmのC型クリップとPLAの平置き出力により、手持ちのプローブに適合する十分な保持力と適度なバネ性を実現し、片手での安定した測定が可能となりました。実用検証により判明したZ方向の厚み不足によるねじれ歪みについては、アーム高さを増す設計変更で剛性を改善し、Sketchfab等を通じたデータ公開を進めます。



