3Dプリンタで作るネジ締めコレット式ボールジョイントの設計

前回製作したアームジョイントにより、10mm角パイプを用いた前後の折りたたみや高さ調整は強固に固定できるようになりました。しかし、根元が完全に固定された状態では、アームを斜め方向に引き出したり、作業スペースのレイアウトに合わせて左右に振ったりする柔軟性が不足していました。

USB顕微鏡を基板作業で快適に使うには、アームの根元部分である程度の傾きや回転を逃がせる関節が必要です。市販の金属製自由雲台を追加する方法もありますが、10mm角パイプとの結合部が長くなり剛性が落ちるため、根元に直結できる専用のボールジョイントを3Dプリンタで自作することにしました。

コレット式ボールジョイント

目次

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土台側で角度を微調整できる球体関節の構想

今回の目的は、アームの土台部分にコンパクトなボールジョイントを配置し、作業台の状況に合わせてアーム全体の立ち上がり角度を自在に微調整できるようにすることです。

将来的な拡張として、この土台部分にDINクイックシューを取り付け、三脚やクランプのソケットにワンタッチで着脱できる構造へと発展させる構想を持っています。そのため、今回の試作ではまず、ボールを確実に保持できる強固なコレットチャック機構を成立させることに集中します。

手締めで確実にロックできる球体関節の仕様

設計にあたって設定した目標は以下の通りです。

  • 保持力の目標:アーム全体の重量および先端の顕微鏡を取り付けた状態で、作業中に角度がずり落ちない十分な摩擦力を確保すること。
  • 可動範囲の目標:アーム根元の傾き調整として、干渉なくスムーズに動かせる角度として約50度の可動範囲を確保すること。
  • 操作性の目標:六角レンチなどの工具を一切使わず、外周のリングナットを手で締め込むだけで完全に固定・解除ができること。

コレットチャック構造と3Dプリント製ボールの設計

CADソフトのFreeCADを使用し、PLAフィラメントを用いて各部品を設計・出力しました。課題を解決するために採用したアプローチは以下の通りです。

割り溝(スリット)を入れたコレットスリーブ

ボールを保持するハウジングの外周に台形形状のオネジを切り、縦方向に深いスリットを複数箇所設けました。外側からリングナットを締め込むと、スリットが狭まることで内径が均等に縮径し、ボール全体を均一な力で包み込むコレットチャック構造を採用しています。これにより、一点に無理な応力を集中させることなく、高い締め付けトルクを摩擦力へと効率よく変換できます。

3Dプリント製ボールと角パイプの締結

挟み込まれるボール部分も3Dプリンタで球体を出力しました。ボールの根元には10mm角パイプが嵌合する形状を設け、M4ネジとナットを用いて貫通固定しています。金属球などを流用せず一体でモデリングすることで、パイプとの強固な結合と適切なクリアランスを両立させました。

アームボール

ネジピッチの選定と試作形状

外周ネジは手締めで素早く締め込めるよう、粗めのネジピッチで設計しました。リングナット側には手で握りやすい突起を設け、指先の力だけで十分なトルクがかかるようにしています。 なお、今回の試作品には壁面固定用のフランジ(ネジ止め用の耳)がついていますが、これは当初の壁面固定想定の名残です。今後はこの土台形状を改良し、DINクイックシュー構造と一体化させる予定です。

Collet-Type Ball Joint (Hand-Tightening) by nando-256 on Sketchfab

50度の可動範囲と手締めで動かない固定力を確認

出力したパーツを組み立て、10mm角パイプと連結して保持力と操作性を検証しました。

ボールを全方向に自由に動かせる構造を目指した場合、スリーブ開口部との干渉により動かせる角度は結果的に約50度となりました。360度全方向への大がかりな首振りには至りませんでしたが、アーム根元で作業位置の傾きや向きを微調整する用途としては十分な可動域です。

固定力に関しては、外周のリングナットを手で締め込むだけで、アームを水平に伸ばした状態でもしっかりと自重を支え、ぐらつくことなく完全に静止しました。コレット構造がボールを全周から均等に締め上げるため、強い手締めトルクをかけてもスリーブが割れる兆候は見られず、極めて安定したロック性能を確認できました。

アーム完成図

まとめ

アーム根元の微調整を可能にするため、3Dプリント製ボールとコレットチャック式ハウジングをFreeCADとPLAで設計しました。スリットによる均等な縮径構造により、手締めナットのみでアームを強固に保持できる固定力を実現しました。可動範囲は約50度に留まりましたが、土台側の角度調整治具として実用的な剛性と操作性を確認できました。